●かんべえの不規則発言



2019年7月 







<7月11日>(木)

○さてさて、札幌である。昼間の気温は20度台後半まで上昇するが、空気が乾いているから暑くは感じない。夜はひんやりして風が心地よい。いやもう、今年の首都圏は5月は猛暑、6月は梅雨で晴れ間知らず、そして7月も梅雨明けせずというドツボな気候が続いておりますが、こちらは快適です。

○札幌の街並み、というのはかなりの部分が1972年の札幌五輪の直前にできたのだそうで、さすがに老朽化が目立ち始めている。実際に建て替え工事も始まっている。となると、「そろそろもう1回やりますか!アレを」という声が起きるのもある意味自然なことである。何しろ札幌には、ジャンプ台からカーリングまで、あらゆるタイプのウィンタースポーツの施設が揃っている。冬季五輪を誘致しても、新たな投資はそんなには要らない。

○とはいえ、五輪誘致は昨年の胆振地震でさすがに出ばなをくじかれた。そこで2026年はギブアップして、2030年はどうか、という声があるらしい。というか、その前の2018年が平昌で、2022年が北京なんだから、アジアの都市が3連荘することはさすがに無理でしょう。少しほとぼりを醒ましてから2030年。悪くないと思います。

○ここで問題になってくるのが、北海道新幹線の札幌開業が2031年の予定であることだ。「おい、1年くらい前倒し出来んのか?」と誰でも考える。ところが、新函館北斗駅から小樽を経由する今の計画ルートは、トンネル工事が多いので工期の短縮は難しいらしい。室蘭経由だったら、何とかなったかもしれないんだけど。

○しかしまあ、こういう公共投資で景気を良くしよう、という発想はいかにも旧態依然であるようにも思える。「遊民経済学」の時代においては、地域活性化の基本は「観光と農業とスポーツ」である。そしてこの3つにおいて、日本国内で北海道を超える地域はないだろう。だったら、”Hokkaido”ブランドをとことん世界に広げて、人とおカネが集まってくるようにするのが、これからの時代には適しているんじゃないか。

○ところで、北海道のワイン業者の方から、こんな悩みを聞きました。日米経済協議で、アメリカ産ワインの関税も下がってしまうんじゃないか。日欧EPAのときも、ワイン関税はすぐに下げられた。あれは日本の大手ワイン販売業者が、国産よりも輸入ワインで儲けているからで、国内の生産業者のことを真剣に考えてくれない。チーズ業者は、まだしも補助金が出たんだけどねえ・・・。

○ワインを愛好するものとしては、ナパの値段が下がるのはうれしいけれども、なるほどそういう問題もあるのですな。「観光と農業とスポーツ」のフロントランナーたる北海道にも、いろいろ悩みは尽きないようです。


<7月12日>(金)

○札幌から帰って来ると、空気が湿っていてとっても不快である。しかも気温は高めと来ている。何なんだこれは! 札幌の乾いた空気と自然な風が懐かしい。

○気を取り直して、この2週間で筆者は福島市と札幌市を訪れたが、これは都内や柏市内もそうなんだけど、「ホントに今回の選挙戦は盛り上がっていませんね!」。札幌では聴衆の反応が悪くて、「うーん、イマイチ」という候補者を見かけました。そして福島市では、行き交う人たちが競馬の話をしていることはあっても、選挙の話はまったく出なかったのである。

○そんな中でささやかれている噂は、「果物を産出する県では自民党が優位。米ばっかりの県だと不利」。ははあ、そういうことなのですか。確かに岡山県、山梨県、福島県では自民党が有利なようだ。逆に秋田県、山形県、新潟県では苦戦が続いているらしい。まあ、そんな中でも北陸三県は自民党が安泰だ!という声もある。

○7月21日の投票日まで、残り10日を切った計算になる。これから先がどうなるのか。あまり波乱はないのかなあ、という予感がしております。それがいいのか、悪いのか、は別問題として。


<7月13日>(土)

○町内会の夏祭り、始まる。朝から山車の組み立て作業が始まるが、もう何十回もやっているにもかかわらず、毎回、訳が分からなくなるのはなぜだろう。しかも今朝は暑くて蒸している。丸2日、札幌の快適な空気に慣れていた身には辛過ぎます。申し訳ないが、途中で戦線離脱。

○夕方から交通規制開始。神主さんをお招きしての宵宮は例年通り。天気がギリギリもってくれたのでホッとする。夜はテント横丁で飲み会。高齢者から子供まで揃って盛況である。2015年から始めた企画なので今年で5回目。着実に発展していて、そろそろ横丁が手狭に感じられるようになってきた。

○問題は明日の天気がどうなるか。せめて午前中だけでも晴れてくれればいいのですが。なかなか梅雨が明けてくれないものだから、今年は夏祭りも大変なのであります。

○ちなみに本日、東洋経済オンラインに寄稿した駄文をご紹介。「日韓貿易戦争で日本が絶対有利とは限らない」。編集F氏からは「PV狙いに来ましたね」などといわれたけれども、自然体で持論を述べたつもりであります。但し予想通り、コメント欄には罵詈讒謗がいっぱい寄せられております。あはは。


<7月14日>(日)

○本日はものの見事に雨。町内会の夏祭り、こんなにまともに雨にたたられたのは、長い歴史の中でも初めてのことであるらしい。山車の運航もままならず中止。子供向けのイベントは、ご近所のマンションの集会所を借りて実施。例年は汗だくで作業した後に飲む生ビールが旨いのであるが、本日は作業していると濡れる上に肌寒い。これじゃチューハイだったらお湯割り希望だね。まったくなんという天候でありましょうや。

○とはいうものの、何事につけても想定外の事態に対応するというのは、ためになるものである。昨日作ったばかりの山車を、使わないままに解体作業するのはちょっと虚しかったが。異常気象が普通になる時代、来年以降に使えるノウハウを残していかなければならない。

○「さすがに今日は中止だろう」と思っている子どもたちが、「イベント会場やってるよ」と聞くと喜んでくれるのは嬉しいものである。たいした景品は用意していないんだけど、水鉄砲とかスーパーボールとかをゲットすると喜んでくれる。これだけは昔から変わらない。まあ、さすがに今日はかき氷とガリガリ君は余っていたようだが。

○ということで、今年は大変な夏祭りであった。しかしこの雨空に、選挙をやっている人たちもいるのだなあ。お疲れ様です。


<7月15日>(月)

○昔、よく使ったネタであるが、フジテレビの『サザエさん』に出てくる磯野波平は54歳という設定である。今のワシよりも若い。1972年に宰相となった田中角栄はやはり54歳で、今太閤と呼ばれて人気を博したが、今見ると70歳くらいの貫録に見えてしまう。でも50年前の50代はあんな感じだったのである。

○それもそのはず、磯野波平さんはあと1〜2年で定年になって、当時の平均年齢だと後10年くらいでお迎えが来るはずである。カツオくんやワカメちゃんの大学卒業には間に合わないかもしれないが、当時の大学進学率は2割くらいなので、あまり気にする必要はないのだろう。と聞くとギョッとするかもしれないが、1970年前後の日本はそんな感じだった。

○昭和の常識というものは、だいたいが「人生70年」くらいの前提でできている。つまり余生があんまり長くはない。特に男性は早死にだった。そこで年金制度も甘く設計してしまったという問題があるのだが、まさか半世紀後に「人生100年時代」が来るとは思わなかったから、それは責められないだろう。

○そんなことよりも、これだけ急速な寿命の伸長があると、だんだん昔の常識が分からなくなってくる。例えば昭和の歌謡曲の中には、「あなたと別れても、思い出とともに生きていく〜」みたいな歌詞がめずらしくないが、今聞くととっても異和感がある。これは、平均寿命が短い時代の発想だと考えれば納得がゆく。自分が90歳まで生きると考えていたら、こんな歌詞は出てこない。つまり男女の情愛さえ、だんだん昔の感覚がわからなくなっていく。

○同様に、「この会社に命をささげよう」という発想も、昭和には普通のことであった。だって人生70年のうち、20歳から55歳くらいまでの大部分を会社が面倒を見てくれたわけだから。ところが今では、会社を離れてからの人生が数十年もある。こうなると「一社懸命」は不合理な選択となってしまう。そりゃあ転職もアリだし、若いうちから副業もやっといたほうがいいですよね。長寿社会は、「個」が強くないと生きていけません。

○人生の時間が長くなると、離婚や再婚が増えることも自然な流れでしょう。だって生きてる時間が長くなるのだから、死別する確率だってそれだけ上がります。既に日本は3組に1組が離婚する時代。「ただ一人の人とだけ添い遂げることが美徳」という考え方は、やはり人生が短かった時期の特色とみることができましょう。

○家族関係も、以前より「長期志向」になるはずだ。つまり親子だけじゃなくて、祖父母と孫みたいな3世代、場合によっては4世代の関係も増えていく。人生が短かった時代には、親や兄弟と喧嘩してもわりと平気だった。今はお互いに老後が長いので、なるべく喧嘩はしない方がいい、ということになりそうだ。ゼロ金利、マイナス金利時代においては、「相続」の問題も重くなっていきますしね。

○長寿化は、政治的には「保守化」につながるだろう。というか、人生100年時代に誰が革命家になろうとするのか。「高齢者が多くなるから社会が保守化する」というのは、あまり当たっていないと思う。今の日本では、高齢者ほど反政府の比率が高くなる。老い先短い者は、無責任になれるのだ。逆にこれから何十年も生きなければならない世代は、政治で下手なギャンブルはできないと考える。このメカニズム、大人はあんまり気づいていないんじゃないだろうか。

○今日のように選挙戦が終盤に差し掛かってくると、案の定、与党の優勢が伝えられてくる。するとリベラル派の媒体が、焦ったかのように「若者よ、投票に行け」などという論陣を張る。でも、若者が投票すると、ますます安倍政権や自民党を利することになると思う。彼らは保守的だから。余生が長い世代にとっては、「あれもこれも全部、政府が面倒を見るべきだ〜」などと言っている野党は、とってもお気楽で無責任に見えていると思うぞ。

○変な言い方になるが、「人生100年時代」は始まったばかりである。それに沿って新しい常識が誕生し、過去の常識がどんどん忘れられていく。だから「昭和の時代」をうまく忘れることが必要ですな。メディアの皆さんも含めて。













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編集者敬白





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by Kanbei (Tatsuhiko Yoshizaki)